Project Cargo Lab
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アメリカ中西部へのプロジェクト輸送

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17.06.20 04:08 AM コメント

ここでは米国中西部でのプロジェクトを事例として、準備段階でどのような活動を行うかを纏めていきます。

米国は、港からプロジェクトサイトまでの輸送距離が長く、道路規定も州ごとに異なるために、

入念な事前準備をした上でも予期せぬトラブルが発生する難易度が高い国の一つです。

このため、第一にプロジェクト関係者との信頼関係、第二に米国道路交通規定の正しい理解がポイントになります。

順を追って、準備段階の手順を確認していきます。



引き出し

プロジェクト規模によっては、出荷工場が大小合わせて数十拠点に渡ることがあります。

こういったケースでは輸出の経験が少ない(あるいは海外案件は商社へ丸投げしている)メーカー様も登場しますので、

工場ごとの属性と、出荷担当者の業務手法を把握した上で、出荷前検査や事前打合せを進めていきます。

場合によっては搬出経路、周辺道路状況、車両待機場所確保、事前採寸などの下見訪問を実施します。


梱包

例えば、中国や日本から米国東岸までの海上輸送日数は、約30日間~60日間程度を要します。

この輸送期間中に発生する貨物へのダメージリスク(損傷、結露、サビ、温度変化等)を最小化するために、

最適な梱包形態を、最適な費用で選択できるよう、プロジェクトマネージャー様へ提案と進言をしていきます。


船積み

海上輸送モードの選定(コンテナ船、在来船、RORO船)、輸出通関方法、港湾関係者との調整を行っていきます。

元請け物流会社や特定の担当窓口へ一任するのではなく、各作業工程ごとの責任者、実務者と直接会話していくことがポイントです。


荷卸し

最短納期を求められるケースでは米国西岸から大陸横断ルートを設定していきますが、

中西部向けであれば、通常は米国東岸の港より荷卸しを行います。

米国は、港湾ごと、ターミナルごとに、運営組織や会社が異なるケースがほとんどのため、

本船の着岸バースをピンポイントで明確にした上で、荷役費用、保管料、重機レンタル料等の交渉に入ります。

予めPort Authority(港湾管理委員会)との関係を作っておくと、後工程が円滑に進むことが多いです。


陸送

米国道路交通規定の輸送制限を正しく把握する必要があります。

ここを完全理解することで、最適な輸送オプションを関係者全員に提案することができるため、

プロジェクト全体の品質向上に繋がります。


[米国での輸送制限貨物サイズ]

*Length: 53’ (約 16,150mm)
*Wideth: 8'6”/102” (約 2,590mm)
*Height: 13'6“/162” (約 4,110mm) *地上高

 ⇒Flatbedの場合: 8’6”/102” (約 2,590mm)
 ⇒Stepdeckの場合: 10’/120” (約 3,040mm)
 ⇒Double Dropの場合: 12’6”/138” (約 3,500mm)

 

[輸送制限重量]

*車両総重量: 80,000lbs(約 36,287kg) *車両自重含む

⇒Flatbedの場合: 積載貨物重量としておおよそ46,000lbs(約 20,865kg)まで積載可。

*車両ごとに自重が異なるため、最大重量制限まで積載する場合には、車両自重を事前確認する必要があります。

[制限外許可申請]

上記よりもサイズ、重量がオーバーする貨物を輸送する場合は、陸送許可を取得する必要があります。

*法定輸送制限を超えるすべての車両は、輸送許可を取得する必要があります。

*運送業者は、車両が通過するすべての州ごと、道路ごとに輸送許可を取得する必要があります。
*州ごとに輸送許可申請の必要要件が異なります。
*標準的な輸送許可は、1~2日程度で承認されます。
*標準的な輸送許可以上の特大輸送車両は、SuperloadあるいはMegaloadと呼ばれ分類されています。
*Superload/Megaloadは、特定の道路や橋を通過するために専門家による事前調査(Engineering Study)を受ける必要があります。

*Superload/Megaloadは、各州の陸送許可(Road Permit)を事前取得する必要があり、以下資料を米国当局へ提出する必要があります。

*Permitの申請から取得まではおおむね3~4週間程度要するため、日側では本船出港日(FOB date)を目途に申請準備を進めていきます。

 また米国中西部における各州ごとの陸送許可取得日数の目安は以下図の通りです。

 

---Road Permit申請時必要資料---

*図面(重心位置、スリングポイントが確認できるもの)

*シリアルナンバー

*梱包前の貨物写真(台乗せ写真等)

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据付

プロジェクトマネージャー様含め、エンジニアリング技術者や現地契約作業員が一斉に現場入りするタイミングになります。

特に事故発生率が最も高い作業工程となるため、徹底した安全管理が求められます。

Covid-19の影響により派遣人員が限られる場合には、人出しを含めてサポートしていく必要があります。

米国での安全管理について、弊社では労働安全衛生庁(Occupational Safety and Health Administration; OSHA)の認定を受けた安全衛生マネジメントシステムを導入することを推奨しております。


事後業務

追加作業や現地での部材調達等、現場要望に応じた調整と金額交渉を実施していきます。

現場が安全かつ円滑に作業できるよう、繊細なコミュニケーションと実直な対応が求められます。




まとめ


ここまで米国中西部向けの一例を纏めていきましたが、海外プロジェクト輸送ではどのようなテクニックよりも、信頼関係の構築が最も重要と感じます。
なぜなら、利害関係的に社内情報を外部の人間に出すことに抵抗のある企業も多いですし、管理者、責任者は基本的に会社や自身をプロテクトする機能が働くためです。
しかしそれでも、この人なら言える、腹を割って話せる、と思っていただけることが重要なので、そのような人間になるべく日々自分も頑張っております。
「海外は疎いので、、」と思ってしまっている企業にこそ寄り添い、伴走していきたいと思っています。
この事業領域においては、準備段階の作り込みで9割方成否が決まってくると思います。
しかし、判断できる材料や結果が出揃ってから判断するのでは、今の時代は「遅すぎる」ということがあります。
私たちは、「データ」と「信じるもの」の融合で、圧倒的クオリティを追求していきます。